全国通訳案内士試験 免除を効果的に利用するには?

通訳案内士

今年の2月、2019年度全国通訳案内士の合格通知を受け取りました。

2019年度は合格率が8.5%と過去最低レベルに低く、特に1次試験を突破するためには、真っ向勝負で5科目全てを受けるのではなく、科目によっては試験免除を狙うべきだと感じました。

2017年、2018年と受験して、2019年度にようやく1次を通過し2次試験の合格までに至りました。この経験から、私なりに効率よく試験を突破する方法を考察したいと思います。

全国通訳案内士試験の難易度と免除対象

2020年度の1次試験が8月に行われ、日本歴史が昨年度同様に難易度が高かったようで、今年度も合格率は低くなると予想されます。この傾向は今後しばらくは続くのではないかと思います。

免除は、それぞれの科目ごとに必要な資格、基準の点数が決められていて、毎年変更がないか確認する必要があります。2020年度の免除は以下のようになっています。

英語筆記試験 免除対象

 英検1級、TOEIC® Listening & Reading Test 900点以上、TOEIC® Speaking Test 160点以上、TOEIC® Writing Test 170点以上のいずれか

日本地理筆記試験 免除対象

 総合・国内旅行業務取扱管理者、一般・国内旅行業務取扱主任者、一般・国内旅行業務取扱主任者認定証保有者のいずれか

日本歴史筆記試験 免除対象

 歴史能力検定日本史1級・2級、大学入試センター試験「日本史B」60点以上のいずれか

一般常識筆記試験 免除対象

 大学入試センター試験「現代社会」80点以上

また、前年度に合格した科目は、申請すれば翌年度のみ免除されます。

※外国語は英語についてのみ記載しています。

免除を申請すべき科目とそうでない科目

どの科目も免除対象があるので、全部免除を狙えばいいかというと、そうでもないと思います。

私のおすすめは、日本歴史をセンター試験60点クリアで免除申請することです。

もちろん、他の科目も勉強して免除資格を取れればその方がいいのですが、それぞれの試験を通訳案内士の筆記試験と比較すると、免除を狙うより本試験のための勉強をした方がメリットがあったり、クリアしやすかったりします。

では、それぞれの科目について説明します。

英語

もし、すでに英検1級を持っていたりTOEICの基準点をすでにクリアしていれば、免除申請してください。

もし、英語筆記試験の免除を目的に英検1級やTOEIC基準点をクリアしようと勉強するのであれば、通訳案内士の本試験で合格点を取るための勉強をした方がいいと思います。

理由は、1次試験の難易度が免除対象の試験ほど難しくない、または同等くらいだということと、2次の口述試験で1次試験のための勉強が全て役立つということです。

逆に言えば、英検やTOEICで免除資格を満たしていても、2次試験のための勉強は必ず必要になり、単純に英語ができるだけでは2次試験をパスするのが難しいのです。

英検もTOEICも、通訳案内士の英語筆記試験とは違う試験対策も行う必要があるので、その時間をほかの科目の勉強にあてた方が効率的です。

1次試験の合格発表から12月初旬に行われる2次試験まで、1か月あるかないかです。8月の1次試験が終わってすぐに2次試験対策を始めたとしても、一から歴史や地理の語彙を習得しつつ、逐次通訳など特殊な技術も練習するのはとても大変です。

合格体験記を見ると、1次試験の対策が口述試験の準備に大いに役立ったという意見を散見します。1次試験のための勉強は必ず役に立ちます!

日本地理

免除対象の資格試験が通訳案内士の本試験より難しかったり、その資格特有の勉強が更に必要だったりするため、免除対象の試験の勉強をするのであれば、通訳案内士の本試験の合格点を取るための勉強をした方がいいと思います。

年度によってはマニアックで地元の人しか知らないような問題が多く出題されるようですが、観光客が知りたいであろう視点で日本の地理をしっかり勉強すれば、合格点は取れると思います。

また、2次試験ではそういう地理の知識がとても必要になってくるので、1次のための勉強は2次対策も兼ねてやっていくと効率的です。

日本歴史

私はセンター試験(来年以降は共通テスト)での免除をお勧めします。

センター試験の日本史Bには、難問奇問は出ません。広く浅くまんべんなく日本の歴史の知識を付けていけば基準点60点をクリアすることはそれほど難しくないと思います。問題集もたくさんありますし、過去問をやるだけでも確実に力が付きます。

対して、通訳案内士の試験の日本歴史は、前年度に続き今年度も難問奇問が頻出し、試験直後の通訳案内士試験関連のSNSは受験生の嘆きや怒りの言葉であふれました。また、合格点70点に調整が入らない傾向が続いていて、平均点が低くなっても合格点が下方修正される可能性は低そうです。

私は2018年度の1次試験が終わった直後に、1次がパスできない可能性があると判断し、2019年1月実施のセンター試験での日本史B の受験を決めました。もし2019年度に免除なしで日本歴史を受けていたら、たぶん1次の通過は難しかったと思います。

センター試験以外にも歴史能力検定がありますが、合格が難しいようです。でも、歴史検定の勉強は後々役に立つと思うので、もし歴史の力も付けたいのであれば歴史検定で免除を目指すのもよいと思います。ただ、試験日が毎年11月末となり、1次を受けて合格ラインぎりぎりで12月初旬の2次試験に進む可能性があってその勉強もしながらだと、勉強時間の確保が難しいかもしれません。

センター試験(今後は共通テスト)のデメリットとしては、1次試験の結果を待たずに受験の申請をしなければ申請が間に合わない点です。ただ、センター試験利用の免除はセンター受験後から5年間申請可能なので、心に余裕も生まれます。

私は、卒業した高校が今住んでいるところから遠かったので、メールで必要書類である卒業証明書を発行して送ってもらうよう手配しなければいけませんでした。

また、試験当日は、周りは高校3年生など若者ばかりで、受験会場の入り口や廊下に立っている係員にいちいち引き止められ、受験証を見せて受験生だと言わなければいけなかったのが少し面倒でした。受験生の保護者が迷い込んだと思われたようです。でも、大学受験生に交じって試験を受けるのは面白い経験でした。

一般常識

センター試験「現代社会」80点で免除を狙うのもいいと思います。日本史と同様、奇異な問題は出ないし、問題集や過去問はたくさんあるので勉強すれば基準点をクリアできると思います。ただ、日本史と現代社会両方を受験する場合、現代社会の80点という点数の高さがネックになるようです。

私のおすすめは、ESDICメール講座です。

1年目で一般常識が不合格になり、2年目はちょっとお金をかけてESDICの座学講座に通いました。3か月間、全10回くらいの講座だったと思います。遠方の人はDVDでも受講できるようです。3年目も一般常識を勉強することになりましたが、メール講座でも十分でした。

一般常識の問題は、日ごろから新聞やニュースなどによく目を通している人にはそんなに難しい試験ではないのかもしれません。マニアックな問題も出るのですが、合格点が60点なので、取るべき個所を得点できていれば合格できるという意見もあります。

ただ、ESDICのメール講座は、5,000円で10回分のメールが配信され、網羅すべき項目がぎゅっと凝縮されているので、費用対効果がとても高いと思います。

政治、経済など基礎的な知識をしっかりと付けようと思うと、書籍を見たり、新聞から情報を抜き取って集めたりする作業が必要で、あまりに範囲が広いので、それは長く講座を運営してきた学校の力を借りた方が確実だと思います。

ESDICには、2次試験対策でもお世話になりました。

2次試験対策についても、今後記事を書きます。

一次試験で免除を申請するもう一つのメリット

通訳案内士試験は年に1度の試験です。1次試験で一つでも科目が不合格になると、翌年まで受験機会はありません。その意味でも、免除のための別の試験を受けて受験機会を増やすのは、精神的にも体力的にも大きなメリットがあります。

日本地理と日本歴史は、どちらも試験直前まで記憶すべき量が多く、どちらかが免除されるだけで1次試験に向けた勉強の質が上がり、当日も復習する時間や休む時間が取れて楽です。

初めて受験する人も、再チャレンジする人も、効率的な免除を自分なりに考えて対策するといいと思います。

2度不合格になった理由と再受験を頑張った理由

実は、私が通訳案内士の1次試験に2回不合格になったのは、2回とも一般常識を落としたためでした。

2017年に一般常識が不合格になり、2018年度は一般常識と新たに加わった「通訳案内の実務」の2科目だけの受験だったにも関わらず、そして、ESDICの座学に通ったにもかかわらず一般常識を落としてしまいました。

新科目が加わったため、一般常識の試験時間が従来の半分の20分になり、複数の問題で2つ以上の選択肢を解答すべきところを全部1つしか解答していなかったのです。

よほどもう受験をやめようかと思いましたが、再受験になる地理をもう一度しっかり勉強しなおしたいという思いや、生徒たち、自分の子供たちに頑張る姿を見せたいという思い、また、センター試験は1科目だけ受験しても2科目受験しても受験料は一緒だったので、英語も受けてみたら面白いかもという好奇心で、勉強を続けることにしました。結果、得たものははるかに多かったです!

資格試験受験の意義

試験当日、なんでこんな試験受けようと思ってしまったんだろうと、後悔と緊張で気持ち悪くなりながら会場に向かいましたが、不合格の悔しさを乗り越えて目標を達成できた時の喜びはなにものにも代えがたく大きかったです。

資格が得られることはもちろん、挑戦すること、諦めないこと、困難があるからこそ成長することは、人生を豊かにしてくれます。試験前は猛勉強で大変だったけれど、楽しかったです。

英検1級に受かって、それを有効活用するつもりで受験を志した通訳案内士試験でしたが、免許証を発行してもらい、通訳案内士の新人研修にも参加して、また別の広い世界が見えてきました。

コロナ禍で新人デビューは見送りになりましたが、将来、通訳案内士の仕事もやってみたいと思うようになりました。

まだまだ先の道がどんな方向に向かうのかわからないです。楽しみです。

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