児童英語と多読

子供の多読

10年ほど前から英語を学ぶ一つの方法として「多読」が少しずつ広まってきました。

大人の英語習得法として認知され始めると、それを取り入れる高校が出てきて、更に児童英語にも広まりを見せています。

多読は子供たちにこそ、取り入れてほしい英語学習法です。

母国語を習得するのと同じように、絵や音で物語を楽しむうちに、大きな森の中の一つ一つの木がだんだんくっきり見えてくるような自然な英語の習得方法なのです。

私が多読に出会って、自分の児童英語教室に多読を取り入れるようになったころ、まだ子供たちに多読を取り入れている教室はあまりありませんでした。

子供たちが多読で英語を習得していく様子にただただ驚きながら、それぞれの好きなことやレベルに合った本を提供していくことで、子供たちがそれぞれのペースで力を付けていくのを見てきました。

子供の多読をどのように進めればいいか、また、してはいけないことも、書いていこうと思います。

多読は何歳から始めればいい?

絵本に関心を示せば、何歳からでも始めていいと思います。

日本語の絵本を読み聞かせるように、英語の絵本も読み聞かせてあげましょう。

大事なのは、楽しんでいるかどうかです。興味が無さそうなら無理強いは逆効果です。でも、お父さんやお母さんが楽しそうに英語の絵本を読んでいると、子供も興味を引かれて一緒に読みたくなったりします。

子供によっては、お話を聞くことが好きだったり、ただ絵をひたすら見たがったり、また、好きな本もそれぞれ違ったりします。

英語は英語のまま、日本語は介さず読み聞かせてあげるといいと思います。読み聞かせるときの発音も気にしなくて大丈夫です。文字が読めているかどうか、意味が分かっているかどうかも確認はしないように。

同じ本を読んで欲しがることも多いですが、ぜひ、読んであげてください。

ときどき、日本語もまだしっかりわかっていないのに英語も一緒に始めてしまうと混乱するのではないかと心配する声を聞きますが、バイリンガルの子供たちがしっかり2つの言語を切り替えられるように、子供たちは日本語と英語を分けて認識します。

多読で英語を使うとしても、生活の中のごく一部の時間で、日本語を使う時間が圧倒的に多いので、子供たちが混乱するほどの量の英語に触れることはまずありません。

また、多読で英語の本をたくさん読んでいるような子は本好きで日本語の本もたくさん読むので、それぞれの言語が豊かになっていき、決して混ざって困るようなことはありません。

子供の多読の進め方

私の教室に通ってくる最年少は、幼稚園の年長さんくらいで5,6歳の子供たちです。

このくらいの子供たちは、日本語も英語も関係なく、絵を見て英語でお話を聞きながら絵本を楽しみます。日本語でも知らない言葉がたくさんあるので、推測しながらお話を聞いています。英語も同様に、一つ一つの言葉の意味にとらわれず、知らない言葉も想像で補いながら物語の大きな流れを楽しんでいく力が付きます。

また、ほとんどの場合、文字には関心がいかないので、英語を聞き取る力が育ちます。

文字に関心のある子は、音を聞きながら英語の文字を目で追うようになります。そういう子は早くから文字を見て自分で読めるようになります。

でも、いずれ必ず文字も読めるようになるので、もし文字を読もうとしなくても決して教え込もうとしないでください。むしろ、英語の音でお話を楽しんでいるということはそれだけ耳が育っているということです。

ぜひ、子供たちそれぞれの成長を見守ってほしいと思います。とても大事なことですが、決して他の子と比べないでください。

目に見えなくても、子供たちはそれぞれのペースでそれぞれの力を伸ばしています。

学校で英語を教科として習うようになる前に、できるだけたくさん、英語で本を楽しんでインプットをたっぷりしてほしいと思います。

小学生にになって国語の授業で日本語の文法や漢字を勉強して語学的に理解、習得するように、英語もたくさん体の中に入った状態で文法やスペルを学習すれば、何となくわかっていた英語のしくみがはっきりと納得できると思うのです。

ただ、多読で本をたくさん読んでいても、英語の教科で成績が必ずしも良いとは限りません。それは、本が好きな子が必ずしも国語のテストで高い点が取れるわけではないのと一緒です。

テストでいい点を取ることと、その言語が豊かに身についていることは別の話です。

今後はますます将来にわたって英語ができることが大事になってきます。受験だけでなく、社会に出てもずっと英語の力を付けていく必要があるので、英語ができる、英語が好き、という気持ちをどの子にも持ってもらいたいと思います。

私の教室に大学入試の直前まで通ってくれた子たちは、入試の英語もあまり苦労しないようです。特に今後の傾向として4技能試験になっていくようなので、多読で自然に4技能の力を付けていけばこれからの入試にはより有利になります。

また、大学に入っても英語は良くできるので、英語圏に限らず留学を志す子が多いです。

多読の本はどんなものを選んだらいい?

Oxford Reading Tree(通称ORT)オックスフォード出版

多読と言えばORT、と言われるほど定番のシリーズです。

レベル1から9まで、1レベルに1セット6冊が3セット、計18冊が基本のセットになっています。

レベル1から6までについては、更に数セット追加出版され、特にレベル1から3はセットの数が多いのがとても良いです。

なるべく語数(1ワードを1語、とカウントし、1冊の本にいくつの単語が使われているかを指標にします)の少ないものをたくさん読むことで、単語の持つイメージがしっかりと獲得されます。

レベル1は文字なしの本や、一ページ2,3語の本です。レベルが上がると語数も増え、レベル9の一番長いお話は1,500語ほどあります。少しずつ読み進めることで自然に長いお話も読めるようになっていきます。

全レベルを通して、キッパーという5歳の男の子とその家族のイギリスの日常生活や冒険を描いています。絵の中に様々なトリックも隠されていて、何度読んでも新たな発見がある優れたシリーズです。

Brand New Readers 出版社:CANDLEWICK(US)

1つのボックスに10冊の本が入っています。全8ページ、1ページ1行の簡単な文章ながら、かわいいイラストとオチのあるラストで、何度読んでも楽しめる本です。ブルーボックス以外にも、レッド、グリーン、パープル、オレンジの4つのボックスがあります。CDはないのですが、読み聞かせしても一人で絵を眺めてもいいと思います。

Spring Board シリーズ 出版社:マクミラン 

レベル1から16までそろったシリーズです。CD音声付きです。

レベル1は1冊20~30語、レベル16でも400語未満なので、語数の少ない本をたっぷり読んでほしい子供たちにはぴったりです。ノンフィクション、フィクションが混ざっていてそれもよいです。

I Can Read! シリーズ 出版社:スカラスティック

このシリーズは、語数が少ない本の中でも名作が多く含まれていて、CDが付いているものも多いので多読に向いています。特に、Arnold RobelやSyd Hoffなど、何度読んでも味わい深いお話を書く作家の本がたくさん出版されています。

Mo Willems の本

PiggyとGerald の仲良しコンビが毎回笑わせたりほっこりさせたりしてくれる、生き生きとした動きのある絵本です。どんどんページをめくりたくなるお話づくりが秀逸です。全冊揃えたくなります。

まだまだたくさんの本がありますが、先ずは語数の少ない絵本から始めて、英語の意味が分からなくてもお話が楽しめる感覚を味わってください。

インターネット利用で読める本

Raz-Kids (ラズ・キッズ)

アメリカの学校などで使われている e-Book のアプリです。AAレベルからZレベルまで800冊以上の本があり、ネイティブの朗読を聞きながら読むことができます。一年間115.45ドルの使用料がかかりますが、1アカウントで生徒40人まで利用できます。特にノンフィクションが豊富で、音声付きで語数の少ないノンフィクションの本は手に入れにくいので、私はバーチャルクラスルームに生徒さんそれぞれの席を用意して自宅で読んでもらっています。

Open Library

アメリカで利用されているInternet Archiveという団体が運営する無料の電子図書館です。数えきれない本が登録されていて、著者名や作品名で検索してパソコンやタブレット、スマホなどで電子書籍を読むことができます。
ハリーポッターシリーズなど、作者によっては全然登録されていない本もありますが、絵本も数多く見つけることができ、特に絶版になってもう手に入らない本などを見つけると興奮してしまいます。

以上、紙媒体の本、インターネットを利用して読める本を紹介しました。

自分の好きそうなものを選んで、多読の一歩を踏み出しましょう!

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