今回は、私の教室が多読を柱とした英語教室になった過程を振り返ってみます。
最初の子供を出産するため5年勤めた会社を退社した後、二人目の子供が2歳になったときに、得意な英語を使って仕事をしたいと一念発起しました。
2001年のことです。
某英語教材を持っている子供たち対象の英語教室のチューターに応募して、試験をパスしました。
1週間の研修で、クラスルームイングリッシュや教室運営の方法を学び、教室を開室しました。
幼稚園~小学校低学年の生徒たち相手に、工作あり、ダンスあり、歌あり、ロールプレイありのレッスンを毎日こなしました。
でも、キャンセル待ちが出るほど生徒が多く、どんどん疲弊していきました。
生徒たちは一週間前にやったことはほぼすべて忘れてしまいます。
ごく一部、家庭で教材をしっかりこなしている子たちだけ、力を付けていました。
3年間頑張ってチューターを続けたあと、この方法では英語の力は付かないという思いが募り、フランチャイズをやめました。
その後、セミナーに行ったり、他の英語教室を視察したり、アルク通信教育でJーSHINE小学校英語指導認定資格を取得したりして、小さな英語教室を1クラスから始めました。
どんな教授法が本当の英語の力を付けるのか、試行錯誤の辛い時期でした。
そして、ある時、多読セミナーに行って、求めていたものをやっと見つけました。
2009年のころです。
多読については、今はずいぶん認知度も上がってきました。
でも、当時は英語学習法としてはあまり広く認められてはいませんでした。
当時、電気通信大学で多読で成果を出していた酒井邦秀先生がセミナーで、電通大の学生たちが多読でどのように英語の力を付けたかを説明してくれました。
酒井先生は学生を2つのグループに分け、Aグループは従来通り、科学の英語文献などを使った読解の授業、Bグループは1年間ひたすらOxford Reading Treeを読むだけ、という授業を行いました。
すると、1年後に、Aグループは相変わらず英語の力は全然伸びず、かたやBグループからは、ハリー・ポッターのようなペーパーバックを読む学生が出てきたのです。
2年目もグループを希望者で分け同様の授業をしたところ、またBグループからペーパーバックを読む学生が出たことで、酒井先生は多読の効果を確信しました。
3年目以降は全クラス多読授業にしたところ、学生の英語に対する苦手意識がなくなり、本を読むことで英語ができると感じる学生がどんどん増えたのです。
酒井先生の「快読!100万語 ペーパーバックへの道」は、先生が学生たちの多読授業から学んだ多読の可能性について書かれています。
そして、酒井先生の著書を読んで、多読を始める人が出てきました。
当時は、
多読3原則
1・辞書をひかない
2・わからない語はとばす
3・むずかしかったらすぐ投げ出して次の本に移る
というやり方を眉唾ものだととらえる人も多かったようです。
でも、日本の英語教育ではなぜ英語が使えるようにならないのか、ずっと疑問に思ってきた高校の先生たちが、自分の授業に多読を取り入れ、やはり力を伸ばすことを実証したのです。
私は、自分の英語教室に多読を導入しながら、そういう高校の授業を見学したり、多読を取り入れている中高一貫校の多読指導のボランティアに通ったりしました。
マスでやる多読指導の難しさも学びましたが、多読だけでなく多書、多話へと続ける活動の意義もたくさん学びました。
私は2013年から、酒井先生が立ち上げたNPO多言語多読の英語多読講座で多読支援をしています。
大人の多読は子供の多読と違って、テストや入試といった制約がなく自由です。
でも、何のために続けるのか、本当に力を付けているのかがはっきりしないと、ずっと継続するのは難しいようです。
そんな中、それぞれの受講生が着実に力を付けているのを横で見てきました。
一人ひとり力を付けていることに気付いてもらい、本を読んで発見したことを教えてもらうのは本当に楽しいです。
講座生たちは持ち帰って読んだ本についてブックトークで盛り上がり、次に手に取る本がバラエティーに富んでいきます。
大人の多読で一番大切なのは、多読の仲間だと感じます。
今では多読も英語学習法としてずいぶん認知されてきました。
NPO多言語多読の英語多読講座支援をしている重村一義さんの本は、実際に多読をすぐに始められるコンテンツもたくさん紹介されている人気の書籍です。
私はこの本を多読を始めたばかりの生徒さんの保護者の方にお貸しして、多読をより理解してもらっています。
多読はどんどん進化していて、今は興味のあるドラマやビデオクリップなどを楽しむ「字幕なし多観」も英語の力を付けるのにとても有効だとわかってきました。
多読は英語を教授してもらう学習法ではありません。
自分で様々な形で英語で何かを楽しむことで力を付けていくやり方です。
私は、生徒たちが多読で力を付け、英語に自信を持ち、英語が好きだと思ってもらえることが一番大きなメリットだと思っています。
生徒たち、英語多読講座の受講生たちからたくさん学びながら、更に進化していく多読を私も楽しんでいきます。
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